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2004.10.30 (土)

「 拉致問題解決を後押しか 米国の『北朝鮮人権法』に見る日米両政府の対応の相違 」

『週刊ダイヤモンド』    2004年10月30日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 565

 

10月18日、米国ではブッシュ大統領が署名して「北朝鮮人権法案」が成立した。米国の北朝鮮政策推進において「人権問題は主要な要素」となると明記した同法は、拉致問題の解決を目指す立場を、力強く後押しする内容だ。

北朝鮮への支援の前提条件は「拉致された日本人、韓国人に関する情報をすべて開示すること」「そうした拉致被害者が、家族とともに北朝鮮を離れ、本国に帰る完全かつ真の自由を認めること」であると、はっきり宣言したブッシュ政権の姿勢は、日本政府よりもなお、日本の拉致被害者の身の上に想いを致したものだ。

上下両院で、出席者全員の賛成を得て成立した同法は、米国の神髄を示すものでもある。具体的には、北朝鮮の人権、民主主義、法治主義、市場経済の促進を図るNGOには特別の助成を与える権限を大統領に付し、北朝鮮国民に情報を行き渡らせるために、1日12時間を目指して北朝鮮向けのラジオ放送を行うとした。国務省内に北朝鮮の人権問題を扱う特使を任命し、同問題の統括指揮を執らせることも決定された。

政府、国民双方のレベルでの働きかけは、安易に援助を行う小泉政権の拉致問題への対応と較べると天と地ほどの差がある。

もう一つ、日米両政府の対応の相違は、中国および国連に対する姿勢である。

日本政府は、北朝鮮問題で中国に依存しようとする傾向から抜け切れない。北朝鮮に対し、中国の影響力を行使してもらおうというものだが、中国政府は、拉致問題の解決にも人権問題にも冷淡だ。北朝鮮から逃れてくる人びとに対しても同様で、ごく少数の例外を除き、脱北者を追い返してきた。脱北者たちは、命からがら逃れてきたものの、中国領内で再び命を懸けた逃走を続けなければならない。中国の官憲に発見されると、ほぼ間違いなく北朝鮮に送り返されるからだ。そこで彼らを待ち受けているのは厳罰や強制収容所送りであり、彼らの命はこうして失われていく。そのなかに拉致された日本人が交じっていないとは限らない。だからこそ、以下に述べる米国の中国政府に対する厳しい法律は、読む者の胸にズシリと迫ってくるのだ。

米国の新法は、第304項で厳しい注文を国連と中国政府の双方に付けた。
「脱北者が難民かどうか、救助を必要としているかどうかを判断するために、国連難民高等弁務官(UNHCR)が難なく彼らに接触することができるよう、中国政府はその機会を提供する義務を有する」「中国政府は北朝鮮難民への義務を積極的に果たすべきである」「もし、中国政府がUNHCRと北朝鮮の脱北者との接触を拒否した場合、UNHCR事務所はただちに動議を発動し裁定官を任命する」「動議の発動に失敗することはUNHCRの基本的責任の放棄につながる」。

米国の意図はあまりにも明らかだ。脱北者を断固として守る姿勢は、そのまま中国の人権政策への批判である。国連に対しても、人権という切り口で北朝鮮に対して断固たる姿勢で対抗せよ、そうしなければその存在意義が疑われると、批判の矢を突きつけているのだ。

米国は同法案の成立に加えて、日本海にイージス艦二隻を配備した。日本所有のイージス艦も五隻ある。北朝鮮からミサイル発射の動きなどがあれば、いち早く察知して対処するという固い決意の表明だ。ブッシュ再選なら、ブッシュ政権のこの姿勢に、金正日総書記は従わざるをえないだろう。

拉致問題を解決できるとしたら、米国の新法に示された断固たる意思が不可欠だと痛感する。1年以内に北朝鮮と国交を樹立するという小泉純一郎首相の外交政策は、あまりにも無為無策であり、思い違いもはなはだしいものである。

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